Part 6-2 あいまいな表現を避けよう ―文法上の注意点―【おしえて論文作成】
1. 動詞-ing形のあいまいさを避ける
動詞-ing形の用法についてご紹介します。
第2回で、動詞は主語の直後に置くことが原則であるとお伝えしました。これはing形においても同様であり、原則として修飾する名詞の直後に置きます。
しかし、下の修正前の例文のように、主語が複数の動詞をとる場合、動詞-ing形が何にかかっているのかわかりにくくなります。その場合は、修正後の英文のように、接続詞や前置詞を使ったり、文の構造を変えたりして、文意を明確にしましょう。
修正前: Mr. Li teaches the students having a good level of English.
修正後: Mr. Li teaches the students since he has a good level of English.
具体的なテクニックとして、since、because、by、thus、andなど、接続詞や前置詞の挿入、能動系への変更やセンテンスの分割が挙げられます。状況に応じて、動詞やing形の使用にこだわらないという判断も必要です。
動詞-ing形は修飾する名詞から離れないように注意し、文の構造を変更することも検討しましょう。
2. 不可算名詞と冠詞の注意点
続いて、不可算名詞と冠詞を使う際の注意点についてご紹介します。
不可算名詞とは、抽象的な概念や質、小さすぎるもの、不定形の物質(液、粉、ガスなど)など、数えられないものを指し、動詞は単数形を用います。
文中で既に出てきた不可算名詞に言及する際、誤ってtheyなど複数形の代名詞や、many、fewなどの数量を表す形容詞を用いると、読者を混乱させる可能性があります。不可算名詞を繰り返すときは、代名詞に置き換えない方が安全です。
また、冠詞が違うだけで文の意味が変わるため、使い分けには注意が必要です。下に三つの例を示しました。theを使うと、既出の研究を指すことになり、oneを使うと、既に複数の研究に言及しており、そのうちの一つを指すことになります。
自分たちの研究に言及する際、theでも読者にわかってもらえますが、ourを使うと、より分かりやすくなります。わずか一語が異なるだけでも、文の意味が変わるため、注意が必要です。
例1: The study revealed that X can cause cancer.
例2: One study revealed that X can cause cancer.
例3: Our study revealed that X can cause cancer.
(1: 既出の研究、2: 複数あるうちの1つ、3: 自分たちの研究)
代名詞や冠詞で読者の混乱を招くこともあるため、文の細部まで気を付けることが重要です。
3. 既出の情報の取扱い
次に、既出の情報の取り扱いについて、ご紹介します。
前述または後述した内容に言及する際、あいまいな表現を使うと、何を指しているのかがわかりにくくなります。
例えば、the formerやthe
latterなどは、指し示す言葉をそのまま書くことでわかりやすくなります。これは、指し示す内容が離れている場合は非常に有効であり、キーワードを繰り返すことで読者の理解が深まります。
また、as mentioned aboveやbeforeなどは、see Section 1.1やsee the above paragraphなど、言及する箇所を明確に指し示すことで正しい情報を参照してもらえます。
具体的な言葉は読者にとって理解しやすく、記憶に残りやすいといえます。
4. 難しい表現に注意
最後に、難しい表現を使う際の注意点をご紹介します。
ラテン語に由来する表現は、筆者には意味が分かっても、読者が知らない可能性があります。投稿先の過去の論文を確認し、その表現があまり使われていない場合は、英語の平易な表現に書き換えましょう。
例: i.e., e.g., a prioriなど
また、同じような綴りで意味が異なる言葉 (同綴異義語) もあります。
| 例: | alternately (交互に) / alternatively (別の方法で) sensible (賢明な) / sensitive (敏感な) |
|---|
さらに、下の例文のように、一文字違うだけで、大きく意味が変わる言葉もあります。
誤: There are three solutions to asses. (ロバ)
正: There are three solutions to assess. (評価)
ワードなどのスペルチェックでは、文法的に誤りがなく、実在する言葉であれば、警告は出ません。ご自分や共著者でよく確認したり、ネイティブスピーカーによる英文校閲を受けるなどして、ミスをなくしましょう。