Part 7 [ Who+Did+What ] の構造を明確にする【おしえて論文作成】
1.受動態を使う際の注意点
はじめに、受動態を使う際の注意点についてです。論文を執筆する際に、受動態をよく使う場面を2つご紹介します。
まず1つめは、手順を説明するときです。手順の説明に受動態を使うと、キーワードとなる装置や薬品、手法を文頭に置くことができるのがメリットとなります。実際に使用する際の注意点ですが、受動態にすることで主語が不明瞭になってしまう場合は、無理に受動態を使わず、能動態にすることも検討しましょう。また副詞を使うことで、主語をわかりやすくすることもできます。
例えば下の修正前の例文では、検討するのが著者なのか、他の人なのか判別できませんが、修正後の例文では副詞のoftenを使うことで問題を解決しています。
<修正前>
Using X method is considered …
⇓
<修正後>
Using X method is often considered …
他にも受動態にすることで主語があいまいになりやすい動詞が多くありますので、作成した文を見直して、主語が明瞭になっているか確認するようにしましょう。
2つめは、他の研究の結果や既知の知見に言及するときです。分野によっては、人を主語とする文の使用を認めていないジャーナルがあります。このようなジャーナルに投稿するときは、自分の研究に対しても受動態を使うことになるため、自分と他者の研究と明確に区別できるような工夫が必要になります。その場合は、主語によって時制を変えることで区別することができます。
下の表のように、一般的な事実は現在形、他者の研究は現在形、現在完了形、過去形、自分の研究は過去形が使われます。

自分の研究には過去形のみが使われることに注目すると、他者の研究と区別することができます。人を主語とする文が使用できる場合は、weを主語としたり、in our studyを使うことで、主語を明確にすることができます。
2.自分の研究と他者の研究の区別
続いて、自分の研究と他者の研究を区別する方法をご紹介します。
1つめは、参考文献を適切に引用し、情報の出所を明確にすることです。
2つめは、引用した文献に対して、著者名を具体的に書くなどの工夫をすることです。これは、連続する文中で自分と他者の研究が引用されている場合、“the authors”などのあいまいな言葉を使うと、どちらを指しているのかわからなくなるため、そのような事態を回避するためでもあります。
3つめは、自分の過去の研究を引用する際は、他者の研究ではないことを明確にすることです。
下の例文を見ていただくと、1) の文献はこの論文の著者が書いたものですが、修正前の文ではそれがわかりません。修正後の文では、weと明記することで、自分の過去の研究であることがわかるようになりました。このように、引用する情報の出典をはっきりさせることが重要です。
<修正前>
In a previous paper1), X was measured …
⇓
<修正後>
In a previous paper1), we made measurements of X …
3.参考文献を引用する際の注意点
最後に、参考文献を引用する際の注意点をまとめました。文献引用のスタイルは各ジャーナルの投稿規定で定められているので、執筆を始める前に確認し、指定の書式に従うようにしましょう。Wordなどの文書作成ソフトについている参考文献管理機能や、EndNote、Mendeleyなどの文献管理ソフトを使用すると誤りが少なくなります。
また、著者の匿名性を保つために、著者の情報を伏せられた状態で査読を行う「ブラインド査読」が行われるジャーナルもあります。ブラインド査読が行われるジャーナルに投稿する場合は、自分に関する情報が論文上で漏洩しないように注意が必要です。
下の修正前の例文では、先ほどご紹介した自分の研究と他者の研究を区別するためのテクニックを使っていますが、文献情報とweから著者の正体がわかってしまいます。そこで修正後の文では著者名だけを示し、自分との関係は明らかにしないことで、匿名性を保っています。
<修正前>
In a previous paper (Sato et al, 2020), we demonstrated that…
⇓
<修正後>
Sato et al. (2020) demonstrated that…
以上より、投稿先の投稿規定を確認し、ルールに従って論文を作成することが大切です。